2013年1月27日日曜日

仮専用実施権に係る特許出願の取り下げの承諾


>41条の出願のとき、仮専のみ承諾としているのか理由を
>知っている方はいらっしゃいませんか?
>仮専の場合は承諾としておいたほうがなにか都合が良いのでしょうか?

という質問がMLに流れていたので以下の解答を行った。
多分正しいと思うんだけど。

仮専・仮通は、特許を受ける権利ではなく、
その特許出願について将来発生する特許権に係る権利である。
(34条の2第1項、34条の3第1項)

出願が取り下げられると、
その将来発生する特許権は存在しなくなるため、
原則的には、仮専・仮通も消滅する。
(34条の2第6項、34条の3第10項)

ここで、41条1項ただし書きの規定が存在しないと仮定した場合に、
新たに国内優先権主張を伴う出願がなされると、
仮専者の承諾がないまま原出願が取り下げられることとなる。
さらには、原出願の仮専者の実施は、
新たな出願によって発生する特許権の権利範囲に属することとなる。
このため、仮専者は実施の継続が困難になる。

そこで、出願を取り下げるには、
仮専者(=特許庁が把握可能な登録を備えたもの)の
承諾を要することとした。
(青本147P)

つまりは、民法の私的自治の原則=契約自由の原則から、
優先権主張に伴う取り下げの承諾についての協議と同時に
新たな出願についての新たな仮専の許諾について協議がなされ、
優先権主張を伴う新たな特許出願を行った後、
改めてその仮専が許諾されて登録されることが考えられている規定だと思われます。

一方、仮通については、
仮通常実施権の登録制度が廃止され、
仮通常実施権者を特許庁が把握できなくなったことから、
国内優先権主張の際に仮通常実施権者の承諾が不要とした。
(青本147P)

さらに、仮通常実施権者の実施の継続を確保するための承諾に代わる措置として
新たな出願について仮通が許諾されたものとみなす規定を設けた。
(34条の3第5項の趣旨:青本108P)

(追記)
元の質問を読み直すと、
分割出願の場合には仮専者の許諾が不要で、
国内優先権主張を伴う新たな特許出願を行う場合には仮専者の許諾が必要なのは何故か
という質問も含まれていたように感じた。

でも、
分割の場合は分割元の出願が取り下げられるわけでもないから、
原則的には分割元の仮専用実施権の権利内容が変化するわけでもないしなぁ……