ざっと読んだだけなので、細かい部分がいい加減だったりしますので、その点はご容赦願います。
http://www.patentjp.com/09/T/T100452/DA10003.html
この特許ですが、"シリーズ化された一連のゲームソフトを買い揃えて行くことによって、豊富な内容のゲームを楽しむことができるようにすることをその課題とする。"と記載されている通り、
「シリーズもののゲームについて、新作を購入したときに、旧作を持っていると、新作で追加要素が遊べる」ことを主眼とした物です。
さて、特許についての書類はおおざっぱに、技術解説書である「明細書,図面」と、権利書である「特許請求の範囲」から構成されています。
以下、明細書の記載について、図1に基づいて説明を行います。
まずは、ソフトウェアの構成の説明からです。
図1には、第1~第3CD-ROMが描かれています。
ここで、ゲームのシリーズ名を、例えば、「ファイナルクエスト(略称:FQ)」としておきます。
第1CD-ROM:FQ1のディスク
第2CD-ROM:FQ2のディスク
第3CD-ROM:FQ3のディスク
とします。
「第1CD-ROM:FQ1のディスク」には、
・ゲーム用プログラムデータ=FQ1の本編プログラム
・第1のキー=FQ2用のキー
が記憶されています。
「第2CD-ROM:FQ2のディスク」には、
・標準ゲームプログラムデータ=FQ2の本編プログラム
・拡張ゲームプログラムデータ=FQ2の拡張データ
・制御用プログラム
・第2のキー=FQ3用のキー
が記憶されています。
「第3CD-ROM」には「第2CD-ROM」と同様のデータが記憶されています。
次に、ソフトウェアの動作の説明を行います。
「FQ2のディスク」がゲーム機に装填されると、「制御用プログラム」が読み込まれ、【「FQ1のディスク」をお持ちの場合は、ゲーム機に装填してください。】というインストラクションが画面に表示されます。
ユーザーがインストラクションに従って、「FQ1のディスク」をゲーム機に装填すると、「FQ1のディスク」の「第1のキー」が読み込まれ、その後「FQ2のディスク」を再度装填すると、標準のゲーム内容である「FQ2の本編プログラム」に加えて、拡張されたゲーム内容である「FQ2の拡張データ」が作動させられることになります。
なお、「FQ3のディスク」を装填すると「FQ2のディスク」の装填を促すインストラクションが表示され、同様の動作を行います。
このように、新作ゲームを購入した場合に、旧作ゲームを持っていると、お得に遊べる技術に関する特許であることが分かります。
さて、ここで、カプコン社が取得した権利はどういったものでしょうか。
権利書である「特許請求の範囲」の「請求項1」には、
(A:前提部分)
ゲームプログラムおよび/またはデータを記憶する記憶媒体を所定のゲーム装置に装填してゲームシステムを作動させる方法であって、
(B:ハードウェアやソフトウェアの構成)
上記記憶媒体は、
少なくとも、所定のゲームプログラムおよび/またはデータと、所定のキーとを包含する第1の記憶媒体と、
所定の標準ゲームプログラムおよび/またはデータに加えて所定の拡張ゲームプログラムおよび/またはデータを包含する第2の記憶媒体とが準備されており、
上記拡張ゲームプログラムおよび/またはデータは、上記標準ゲームプログラムおよび/またはデータに対し、ゲームキャラクタの増加および/またはゲームキャラクタのもつ機能の豊富化および/または場面の拡張および/または音響の豊富化を達成するように形成されたものであり、
(C:ソフトウェアの動作)
上記第2の記憶媒体が上記ゲーム装置に装填されるとき、
上記ゲーム装置が上記所定のキーを読み込んでいる場合には、上記標準ゲームプログラムおよび/またはデータと上記拡張ゲームプログラムおよび/またはデータの双方によってゲーム装置を作動させ、
上記所定のキーを読み込んでいない場合には、上記標準ゲームプログラムおよび/またはデータのみによってゲーム装置を作動させることを特徴とする、ゲームシステム作動方法。
と書かれています。(カッコ内と改行は筆者による)
「A」には、基本的な構成が書かれています。
ここで、「明細書」では、CD-ROMと書かれていたところが、「特許請求の範囲」では「記憶媒体」となっています。ですので、特許権としては、CD-ROMのような光学ディスクだけではなく、カセット形式のものも含まれることになります。
ただし、「ゲーム装置に装填して」と記載されていますので、常時装着型の記憶媒体であるHDDにダウンロードするようなゲームは、本特許の技術に含まれないと考えられます。
「B」には、
・「ゲームプログラムなど(FQ1の本編プログラム)」「所定のキー(FQ2用のキー)」
を包含する第1の記憶媒体(第1CD-ROM)
・「標準ゲームプログラムなど(FQ2の本編プログラム)」「拡張ゲームプログラムなど(FQ2の拡張プログラム)」を包含する第2の記憶媒体(第2CD-ROM)
の2つの記憶媒体を備える構成であることと、
拡張ゲームプログラムの具体例(使えるキャラが増えるなど)が列記されています。
「C」には、「第1の記憶媒体」の「所定のキー」が読み込まれた場合に、「第2の記憶媒体」の「標準ゲームプログラム」と「拡張ゲームプログラム」の双方によってゲーム装置が作動することが記載されています。
つまり、この特許では、
・「FQ2のディスク」に「標準ゲームプログラム」と「拡張ゲームプログラム」の双方が包含されていること
・「FQ1のディスク」に包含されている「所定のキー」がゲーム機に読み込まれている場合に、「FQ2のディスク」の「標準ゲームプログラム」と「拡張ゲームプログラム」の双方によってゲーム装置が作動すること
の2つが必須の構成となっています。
ですので、別のディスクから新たにデータを読み込むような「パワーアップキット」方式は、本特許の権利対象ではありません。また、旧作のディスクからデータを読み込むような方式も、本特許の権利対象から外れると考えられます。
ここで、複数のカートリッジを装填した場合にゲーム内容が追加されるMSX版グラディウス2は、上記の特許出願より古いものであるため、請求項1に記載された権利を無効にできる可能性があります。また、旧作のセーブデータをキーとして使うようなものも、上記の特許出願以前からあるかもしれません。
しかしながら、ゲーム機を1つの読み取りドライブのみを備えるゲーム機に限定し、ディスクやカセットの入れ替えが必要な権利に限定してしまえば、無効にすることは難しいのではないかと考えます。